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カメラ漫画夜話 第十二話 鉄娘な3姉妹

(松山せいじ 小学館サンデーGXコミックス 1〜3巻発売中)

 前回「レントゲンと眼底写真以外は何でも撮る」と私は書いておりましたが、恥ずかしながらその中でさして没頭している訳ではないのが「鉄道」というジャンルです。旅行に行けばそこのローカル線を走る電車を撮り、たまに近所を走っている叡山電鉄とその沿線の風景を撮り、最近全然行っていないものの梅小路蒸気機関車館でSLを撮る程度。その構成も寧ろ鉄道と言うより風景写真に近いような感じでしょうか。凝り出せば秒5駒以上の連写ができるハイエンド機に白バズというだけでなくて最良の条件を生み出す季節や時間帯まで計算に入れて撮る、というところまで行っている方もおられますがそこまで凝ってる訳ではありませんで……旅行の際はほとんど電車の世話になってる身ではありますけど。それでも今回紹介する「鉄娘な3姉妹」を読んでみたら登場する電車はなかなか魅力的に描かれてたんですね。これでもかこれでもかってくらい。電車に疎くてもそれで十分楽しめますのでそこはご安心ください。では本題に入ります。

 主人公はタイトルにもある通り三人の姉妹で、母親が死んだ後娘三人をそれぞれ違う親戚に預けたまま蒸発した父親から届いた、
「あいたい 父より」
とだけ書かれた手紙と切符。それを頼りに東京駅に集まった姉妹が電車を乗り回して父親に会いに行く。だけど目的の駅に着いた時に父親はおらず、その代わり次の目的地に来いと書かれたメッセージを駅員から渡されて、そこで一行は一旦帰った後、次の回で再び東京駅に集結して電車の旅に出るというのが大筋です。2巻以降では
「今回の旅に隠された謎を解き明かせ」
「知り合いの子供を家に送り届けてくれ」
 といったミッション遂行のエピソードも入ってきますが。
 当の親が福音寺国鐵という鉄道ファンにその名を轟かせたカリスマ的鉄ヲタで、娘にカメラ、時刻表、鉄道模型を買い与えてヲタク的英才教育を施しただけあって三人ともそちら方面の知識と技術はありえないほど図抜けた物を持ってます。次女の美唄(びばい)はJR、私鉄の時刻表を暗記しており、三女のビンゴは市販品以上の精工な模型を作り上げ、そして長女の三浦あず……失礼、美章(びしょう)は縦グリと誰もが驚く重厚長大なバズーカ超望遠レンズの付いたαを軽々と振り回します。まーとにかく美章姉さんのカメラテクは半端ではありません。ソニーα700や900+バズーカ(松山氏はαを実際にお持ちではあっても、描くのは見た目重視で何mmかは深く考えていらっしゃらないようですが)を軽業師の如く振り回すのは元より、眠っている間でもシャッターチャンスは抜かりなく押さえる、駅で寝ている猫も入れた電車、山々を背景にした電車と一ひねりした構図も逃さないと写真家としての実力もなかなかのものです。基本はαとバズーカですが機動性重視の時やスナップショットではサイバーショットT900を使ってますね。αに標準で三人揃っての記念写真も撮ったり、山や広大な建物を狙うために超広角(これもヤシカコンタックスやニコンの15mmももう少しスマートじゃなかったかってくらい前玉の口径大きいです)を持ち出したりもしてますけど。

 基本テーマが鉄道だけに電車や姉妹が行く先々の駅や土地の景観は丁寧に描かれてます。2009年1月廃止のEF55、2009年3月廃止の最後のブルートレイン、今年話題の500系のぞみ(→こだま)が取り上げられていて過去を偲ぶ便になりますし、幕間の作品に絡めた座談会で初心者には分かりにくい事も、欄外で美唄が解説するという形式で注釈も付いてます。殊更に鉄ヲタという訳でなくても、旅行がお好きなら読む価値はありましょう。旅に出たくなることは請合いますw。あとタイトルもヲタならニヤリとさせられるような付け方ですね。
「パパをたずねて鶴見線」
「ねえEF55(ムーミン)こっち向いて」
「能登かわいいよ能登」(加えてこの回のゲストキャラの名前が能登マミコだったり)
 この辺でツボ押さえてくださっているのもまた憎いですなw。
2010年3月25日 16:03 こーちゃん (4)
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